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筆入れは日本で生まれた。欧米では原則として学用品は学校の机の中に置いておくので、筆入れの必要性を感じなかった。わが国では明治を迎え欧米の文具が輸入され、学校教育が普及するとともに、それ以前の毛筆を入れる文字通りの筆入れから、新たに学用品を持ち帰り整理する道具として、鉛筆などを収納する筆入れが誕生した。
戦前は木箱が使われ、昭和10年代はアルミ缶と併用された。セルロイド製のものはあったものの高価で、戦後も30年前後になって全盛期を迎える。しかし熱に弱いという欠陥があり、硬質の塩化ビニール製品がセルロイドに代わる。昭和35年頃にはビニール製ファスナー式のものが一時期使用された。やがて軟質塩化ビニール製品が開発され、昭和30年代後半以降に普及する。この製品の特長は、美しい色合いで絵柄を描けること。
昭和43年頃には細長い強化アクリルタイプの筆入れも出現。かねてよりあったが高価格で一部使用にとどまった本革、それに合皮製のソフト筆入れが同50年代に登場、布製のものなども加え、多種多様の製品が出揃うことになる。